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  2007年2月:北京・磐錦
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【3月5日】 盤錦→天津

昨日の荒れた雪空が嘘のような青空が窓を覆う。

外では雪かきをしているのだろう、スコップのカリカリいう音が建物の間に響く。
人民日報によればこの雪は中国東北地方を襲った100年ぶりの大雪だったそうだ。窓の外にはあちらこちらに雪に埋もれた車が見える。

建物の間の吹きだまりで車が埋もれている。

北京まで行く交通手段が決らないまま取りあえず簡単に荷造り。

8時過ぎる頃から北京まで戻るための交通機関の情報を伝えてくる旅行代理店からの電話がひっきりなしに鳴る。
高速道路は相変わらず閉鎖されたままで北京までのリムジンバスも運行していない。

鉄道もダイヤ通り動いていないようだ。鉄道のチケットも売り切れている。

昨日までの疲れが出たのか軽い下痢を起こし体がだるい。

朝食を摂るように勧められるが下痢をしたときにはとにかくお腹を空っぽにすることと食べずにいたら、お母さんがキノコと豚骨でスープを作ってくれた。塩味が口に丁度良くて少しいただいた。

とにかく磐錦駅まで行こうと列車の切符がないまま荷物を引きずって外に出る。

お母さんが一緒に来てくれた。家から駅までおよそ5km。雪の中、旅行鞄を引きずって駅まで歩くのかと思うと気が重い。近所の人達の手によってが所々除雪されているがとてもスタスタ歩ける状況ではない。

テリトリーの門はこの道の突き当たりだがえらく遠くに見える。

やっとの思いで会社のテリトリーの門まで辿り着いた。

門の前にタクシーが5,6台いるが値段交渉を繰り返しても駅まで行ってくれるタクシーが見つからない。やっと一台が普段の三倍の料金でOKしてくれた。

大通りを走っている車でチェーンを着けている車は一台もない。もちろんスノータイヤなど装着しいない。昨日と同じタイヤで走っているのだ。

大型トレーラーが行く手で立ち往生している。迂回路があるはずもなくトレーラーが動くのを待つのみ。

トレーラーの運転手はタイヤの下の雪をスコップで掘り出したり街路樹の枯れ枝を集めてタイヤの下に敷いたり、やっと動き出したと思ったらその後に延々車の列。とぎれるまで待ってようやく進む。

どうやって横転したのか、大型トラックが腹を見せていた。

駅の周辺ではオレンジ色のベストを着た市の職員達が除雪作業をしており、既に駅前の道路は路面が現れていた。

駅前はすっかり除雪が進み路面が見えている。

まさしく異国の地そのものという駅前の風景。

駅についてタクシーを降りると未体験の寒さだ。
腰から下が勝手にふるえてくる。ジーンズの上にオアーバーズボンをはいているのに全く効果がない。

駅構内に入れば少しはましかと思ったが風がないのがましなくらいで寒さは大して変わらない。

周囲の大きな窓は二重窓でその下にはスチーム暖房が設置されているのだが暖房の効果はほとんど無い。

鞄を開けてネル地のシャツと毛のチョッキ、さらにレザージャケットを引っ張り出して着込む。それでも暖かくなったといえる状態ではなかった。外気はマイナス20度。

駅の校内は何時来るともしれない列車を待つ客が溢れている。

二重窓なのに構内はスチーム暖房の効果もない。

北京行きの切符は既に売り切れという情報のようだが念のため于くんが長い行列に並ぶ。そのうちに于くんのお父さんも見送りに来てくれた。

お父さんも于くんと一緒にチケット売り場に並ぶ。
こちらは何もできないのでベンチに座ったり立ったり、窓際の殆ど暖かさを感じないスチーム暖房の前に寄りかかったり。

周くんが見送りに来た。車でよく来られたナと思ったら家から一時間以上かかって歩いてきたという。こういう熱さは言葉では言い現せないものが伝わってくる。

駅構内でもコートは脱げない寒さだ。

4時半過ぎになって一時間以上列に並んでいた于くんとお父さんがチケットを手に戻ってきた。
売り切れといわれていたキップがあったようだ。

午後6時盤錦発北京行きの火車、日本で言う普通列車のキップだ。

6時半を過ぎても列車は始発駅を出ていないという。

7時45分に上海行きの列車が来るというアナウンスがあり急遽列車を変更、上海行きの列車で天津まで行くことにし改札口に殺到する一団に加わる。

ホームに出るまでが無秩序。ホームは凍り付いて空気が痛い。

于くんのお父さんもホームまでついてきてくれた。
お母さんがトイレに行っている間にホームに来てしまったのでお別れもできないままだ。

この列車に乗らなければ明日の帰国はない。

入ってきた列車の乗車口の辺りは黒山の人。

私たちが並んだ乗車口は開かれずあわてて荷物を持って数少ない乗車口目指して雪のプラットホームを走る。

乗車口の前は列車を降りようとする人、降りる人を無視して乗り込もうとする人、乗車券をチェックしようと乗降客を押しとどめる駅員。

三つどもえの強いもの勝ちの小世界。

この列車に乗らないと明日の飛行機に乗れないという思いで、この時ばかりはマナー無視。

乗車券を見せろと喚く駅員の制止を振り切り、下車しようとする人を無視し、重い鞄を片手で引きずり上げ、前の人を引きずり降ろしてでも乗り込むという力まかせの乗車になってしまった。

乗車するにはプラットホームからステップを三四段上らなければならないので大きな荷物を持っている乗客はどうしても不利だ。

荷物を盾にステップに足をかける。
空いている片方の手で手摺りをつかみ文字通り力任せに身体を引き上げる。さらに大きな荷物を持った于くんはもっと苦労していた。馬さんは乗れたのか?

私のお陰で乗り損なってしまった名も知らぬ中国の友人達よ許せ。

ゆっくり動き出した車内でホッとしながら後ろを振り向こうとするが身体を動かせない。

ラッシュアワーの通勤電車と同じ状況で大きなスーツケースを降ろす隙間もない。馬さんが于くんの呼び声に応えるのを聞いて安心が一つ。

それにしてもこんな足下も不確かな格好でスーツケースを掲げたまま天津まで行けるのか?

列車が動き出してから、乗務員の情報で一番空いている最後尾の車輌までまたしても強引な移動を敢行。

身体一つなら何とかなるのだがスーツケースを通す隙間がないので頭の上まで持ち上げる。よろけて荷物が落ちそうになると何処からともなく手が伸びてきて鞄を支えてくれる。

ようやく4輛ほど車輌を移動して最後尾にたどり着いた。
荷物を床に降ろすスペースもあった。
ほっとして一息ついていると、よほど惨めな顔をした年寄りに見えたのだろう、青年が席を譲ってれた。

多謝、多謝!

左端に立っている青年が席をゆずってくれた。

落ち着いてから前の席に座っている人達に話しかけると目の前の女性が流暢な英語で返事をしてくれた。

これから上海に職探しにい行くところで、右側はボーイフレンドだと紹介してくれたのだが彼とは話が通じなかった。
彼女は日本に強い興味があって日本語を勉強したともあると、ボーイフレンドよりもよほど元気に話しかけてくる。

左側の女性は地方出身と一目で分かる一人旅。
こちらの問いかけにはにかみながらわずかに首を振って返事をするのみ。

席を譲ってくれた青年はいつの間にかいなくなってしまった。

切符を持たずに乗車したか、切符でも買いに行ったのだろう。

実は私たちも乗車する列車を土壇場で変えたために乗車券無し、乗車口脇に立つ駅員が切符の提示を要求する大声と制止を振り払って強引に乗り込んで来たのだ。

もちろん乗車後直ぐに列車乗務員を捕まえて乗車券を購入している。

盤錦駅構内で着込んで暖かい車内に入って席を譲られてヤレヤレと言うところで気分が悪くなってきた。

今度は身体がやけに熱く息苦しい。
通路の向こうから食堂車に席が三つあるよ、一人30元(約450円)だよといいながら白い調理服を着た人がやってきた。

我が一行で座っているのは私だけ。
馬さんが食堂車に移ろうよと于くんの顔を窺う。
あの混雑した中をまた荷物を持って移動するのをためらう様子の于くん、そのうちにこちらの意識が遠のいてしまった。

…頬を叩かれて気がつくと見知らぬ青年が顔を近づけて何か聞いてくる。

私の左手首で脈を診ている。
于くんがその側で吐き気はないか、持病はないか、具合の悪いところはないかと通訳している。

額から一気に汗が噴き出してきた。
どうやら熱中症のようだ。盤錦駅で着込んだものを全て脱いだ。

馬さんが小さなタオルを濡らして額に乗せてくれる。于くんはパンフレットで風を送ってくれる。少しずつ気分が良くなってきた。

脈をとってくれた青年は医者だと名乗って何度も容態を心配してくれた。
周囲の人達も心配そうな顔でこちらを見ている。列車の乗務員が何度も様子を見にやってくる。

青年医師は水をたくさん飲むようにと注意してくれた。用意してあったペットボトルの水を飲む。
30分くらい経過したのだろうか、ようやく元気になり青年医師に礼を言い周囲の心配そうな顔をしている人達に、『謝謝、大家!』

ウトウトしていると車内の照明が薄暗く落とされた。

賑やかにしゃべっていた隣の席も静かになった。揺れる頭でさらにウトウトする。


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